生産者の考えていること

何を考えてお茶をつくるのか

 私は2018年1月から静岡県静岡市の実家を継ぎ、お茶生産者として働いています。

 ここではお茶の生産者として働くことになった経緯と、何を思いお茶をつくるのかということを少しお話します。

  1. ものづくりの大切さ
  2. 自分の考える幸せ
  3. 手段としての有機農業

 1.ものづくりの大切さ

 大学は静岡大学人文学部経済学科に通っておりました。専攻は金融論で、特に政府の行う金融政策や、

 地域金融機関のあり方等学んでおりました。

 ゼミ生の大半が金融機関・証券会社へ就職していきました。ただ、私にはこの分野の仕事が全く魅力的には感じられませんでした。

 金融機関は社会にとって非常に重要なのは間違いありませんが、直接何も生み出せていないということを強く感じました。

 かつて士農工商という職分があったのはご存じの方も多いと思います。商は現代に置き換えれば銀行業や商社業務であり、

 こうした仕事は儒教の考え方では最も下の職業分類でした。今の世の中にもこれが当てはまるのだと思います。

 人工知能関連のニュースを見ない日はありません。人工知能の発展が脅かす職業はまさにこの“商”の職業です。

 また、在学中にフィリピンとインドへ海外ボランティアに参加する機会を得ることができました。

 それぞれの国でスラムへ行き、ゴミを拾って生活している人達の生活を見て、彼らの生活には何も“もの”がないと強く感じました。

 また、東日本大震災の後、2011年5月頃に宮城県東松島へ汚泥除去のボランティアに参加しました。

 東松島は津波で家が流され、道路を隔て何もない平地になっていました。

 バスや飛行機に乗ってわずか数時間で東京という世界屈指の大都市から“もの”のない世界に移動できてしまうのです。

 自分の便利な生活はたくさんの“もの”特に車やパソコンなどの自分の生活を支える便利なものは鉄がなければ作れない。

 実際に存在するものをつくることこそ、人の役に立つ仕事であると考えていました。

 就職活動を通してこのようなことを考え、鉄鋼メーカーへの入社を決めました。

 2.自分の考える幸せ

 入社後は生産管理室という工場の管理部門で働いておりました。

 周りの方に恵まれ、大変なこともたくさんありましたが、非常に充実した社会人生活を過ごすことができました。

入社して3年ほど経ったある日、父の60歳の誕生日を迎え家族全員で還暦祝いを行いました。

 就職活動をしていた時は父もまだまだ若々しく特に思うところはありませんでしたが、

 この時初めて父も少し歳をとったなと感じました。

 自分の幸せを考えたとき、両親に幸せでいてもらうことも自分の幸せの1つだと考えました。

 まだまだ元気、しかしそのうちに学んでおこうと思ったのが2016年10月。翌月には上司に退職依頼を提出しました。

 3.手段としての有機農業

 私には夢があります。それは孫の代、またその次の世代にまでこのお茶の仕事を残すことです。

 そのためにはこの仕事を自分が感じたように魅力的なものであると感じてもらう必要があります。

 実際、日本のお茶の魅力を感じている人は世界中に増えています。

 近年、日本茶の輸出は年々増加していることが何よりの証拠だと思います。

 特に、環境意識の高い欧米では有機栽培であることが品物を選ぶ際の大前提となっており、

 味やブランドなどの要素は栽培方法の次に来る基準となっている場合があります。

 また、次の世代へこの仕事を残すために大切なのは、自分が受け継いだ土地を汚さず、健康な土地として残すことです。

 私がお茶をつくるうえで無農薬にこだわる理由はここにあります。

 無農薬栽培は目的ではなく、次の世代にこの仕事を残すための一つの手段だと考えています。

 先代たちが守ってくれたこのお茶の作り方は本当に貴重なものであり、世界にも認められるものだと確信しています。

 ほかの作物と比較し、お茶は慣行栽培では肥料を多く使用します。

 過剰なN(窒素)、P(リン)、K(カリ)の施肥や殺虫剤などの農薬の使用は土壌や水質汚染を引き起こし、

 人の健康にも有害な影響を与えうるものです。

 そうした農薬、化学肥料を一切使用せず、土地にも、水にも、農家自身にも、もちろんお茶を飲む消費者の方々にも優しい農業を目指していきます。

 持続可能な農業というのは、消費者も含めた農業に関わる全ての人がずっとその生産物を食べていけるような環境を維持することが大事だと思います。

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